税金の滞納処分で給料差押え、差押禁止財産と差押えの範囲、国税徴収法
■民事執行とは別の基準を設けている
民事執行法による差押え可能範囲と国税徴収法による差押えの可能範囲はまったく違うものです。
給与(給料や賞与)は労働者の労働対価であり、生活上なくてはならないものであり、本来、最低限の生活は憲法でも保障されいる。 故に税金の滞納処分の差押えは「国税徴収法」という法律で、債務不履行などによる差押えは「民事執行法」や「民事保全法」で、差押えを受ける人の最低限の生活に配慮して、差押えをすることができない財産(差押禁止財産)について定められています。
この差押禁止財産の範囲は、民事執行では、『給料の差押えは禁止範囲が定められている。』で説明しているとおり、給料の4分の3は差押えが禁止されています。ただし、4分の3が月額33万円を超えるときは、33万円を超える部分は差押えることができることになっています。
ですから、本人にとっては、いくら給料が少なくても、4分の1は差押えされてしまうことになっているのです。
他方、税金の滞納処分の場合は国税徴収法で差押禁止財産が規定されています。給与額の何分の一という規定ではなく、
下記のとおりとなっています。
(差押禁止部分)
【例1】
給料の総支給額:720.000円
源泉所得税:39.230円
特別徴収住民税:27.400円
社会保険料等:96.169円
扶養家族 妻、子供2人 計3人
差引手取額:557.201円
①法第76条1項1号の金額 40.000円
②法第76条1項2号の金額 28.000円
③法第76条1項3号の金額 97.000円
④法第76条1項4号の金額 235.000円
100,000円(滞納者本人)
+45,000円×3(扶養親族数)
⑤法第76条1項5号の金額 64.000円
{720,000円-(①+②+③+④)}×0.2
=64.000円
差押可能額 256.000円
720,000円-(①+②+③+④+⑤)=256.000円
差押後手取額
557.201円-256.000円=301.201円
【例2】
給料の総支給額:177.000円
源泉所得税:1.240円
特別徴収住民税:8.830円
社会保険料等:22.970円
扶養家族 妻、計1人
差引手取額:144.960円
①法第76条1項1号の金額 2.000円
②法第76条1項2号の金額 9.000円
③法第76条1項3号の金額 23.000円
④法第76条1項4号の金額 145.000円
100,000円(滞納者本人)
+45,000円×1(扶養親族数)
⑤法第76条1項5号の金額 0円
{177,000円-(①+②+③+④)}×0.2
=▲400円
差押可能額 0円 差押不能
177,000円-(①+②+③+④+⑤)=▲2.000円
差押後手取額 144.960円
強制執行による給料差押えは、給与が少なくても四分の一は差押えされてしまうが、税金の滞納処分では、上記【例2】のような場合は差押えをされることはない。
しかし、税金は、自己破産手続きを行っても免責されないので注意が必要です。
なお、強制執行と滞納処分が競合する場合は「租税債権優先の原則」があり、税金が一般の債権より優先されることになっています。詳細については、「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律」に定められています。
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