業者の請求に応じてしまった場合の消滅時効援用は可能か?借金・大阪

業者の請求に応じてしまった場合

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債務承認とされる行為で中断?

借金を負っている方が、様々な事情で支払ができなくなることがあります。
そのような事情が改善されないで、支払いを停止してから、数年、場合によっては10年以上支払をせずに、どうすることもできないことがあります。
ところが、既にかなりの年数が過ぎ去り、忘れた頃に多額の損害金が付加されて請求が来ることがあ。たとえは、50万円程度の元金で、100万円以上の遅延損害金が付いていることもあります。
債務者の心理

もっとも、身に覚えのないような怪しい業者からの請求は、そのほとんどが、とても古い債務で、ご本人も忘れてしまっているような時期の借入であり、それが債権譲渡された結果、まったく本人の知らない業者が債権を引き受けて、取立を行っていることがあります。
しかしながら、そのような場合、既に消滅時効が完成している可能性が高いのです。
もちろん、コマーシャルをしている大手の貸金業者であっても同じで、手を緩めることなく請求を続けます。

巧みに時効の放棄をさせる。

業者から送られてくる督促状には、多額の遅延損害金が付加され、決まり文句として「10日以内支払または連絡なき場合は、法的手続きを講じます。」と記載されています。

一方で、「和解のご提案あがある。」「今、和解に応じれば減額します。」などと巧みに和解を迫って、債務の承認、あるいは一分の支払をさせて、時効の中断をさせ、結果として時効の主張をさせないようにしているのです。

例えば、時効完成前に債権者に債務者が一部弁済したり、弁済の猶予を求める承認にあたる行為をしてしまうと時効は中断して振り出しに戻るりことはこれまでに、口を酸っぱくして何度もお話ししています。
しかしながら、さらに問題となるのは、時効完成後に債務の一部を弁済してしまったり、弁済の猶予や減額交渉、和解交渉を行うと、債権者としては、もはや債務者には時効を援用する意思がないと考え信頼する。その後、債務者が消滅時効を援用してしまうと、債権者の信頼を裏切ることになるので信義則上消滅時効の援用はできないということです。

債務者の乏しい知識につけ込む債権者

債務者と貸金業者である債権者とでは、時効に関する知識の差は歴然としている。
一般的に、債務者には消滅時効の知識などはほとんどないが、相手の貸金業者はプロとして仕事をしているのですから当たり前です。

債務者の無知につけ込んで、言葉巧みに消滅時効の援用権を喪失させようとするでしょう。
時には、高圧的な態度で迫ったりすることもあり、その一方で、甘言を弄して、支払を求めたり、和解を求めるなどする。
債務者は、このような業者の態度に恐れ、恐怖のあまり一部の支払をすることもあるでしょう。そして、貸金業者は当該支払等を時効の中断であると主張するはずです。

しかし、このような場合でも、必ずしも債務者の時効援用権が喪失するとは限らないのです。
判例では、債権者が欺瞞的な方法を用いて、一分の支払をさせたような場合は、時効援用権は喪失しないとしたものがあるのです。欺瞞的方法のほか、畏怖を生じさせる威圧的な方法、一部弁済の額が極めてわずかだったなど、消滅時効の援用が認められる可能性があります。
そもそも、債権者の取立行為が、法令や各通達などに抵触する方法でされていた場合にまで、債権者の保護は必要なく、債務者の時効援用権は喪失云々は関係ないはずです。
あきらめずに相談することをお勧めします。

業者の請求に応じてしまった場合の時効援用書式 → 時効の援用記載例書式テンプレート

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消滅時効の援用について、NPO法人が詳しい説明や無料の相談やアドバイスを行っています。

参考になる判例

札幌簡易裁判所判決 平成10年12月22日

【 判決要旨 】

消滅時効完成後も債務者が債務の承認をしたが、その承認が債権者が弄した甘言等のためになされたような場合には、債務者が時効援用権を行使しても、信義則による制限を受けない。

信義則は個々の当事者間の具体的取引場面における互いの信頼を保護する原則であり、その適用は個別的な事情を考慮する必要がある。
それは両当事者の取引経験や法的知識の有無や程度、そして債務者が債務承認に至った事情等を検討した上で適用すべきである。

取引経験・法的知識が圧倒的に勝る債権者が時効完成を知りつつ、法的無知な債務者にあえてこれを告げないまま債務の一部の弁済をさせた場合や、債務者の時効援用を封じるために時効完成後、甘言を弄して少額の弁済をさせた上で態度を一変させて残元金及び多額に上る遅延損害金を請求するような場合は、債務者が時効を援用することは、債務承認行為をした後といえども、信義則に反しないと考えられる。
このうな場合には信義則を適用して債務者の時効援用権を制限するよりも、本来の時効の効果をそのまま維持することが時効制度の趣旨からも公平の観点からも合理的といえる。

原告は被告の無知と畏怖に乗じて、守る意思も疑わしい甘言を弄して支払をさせており、原告らの信義則違反の程度、不誠実性の大きさは被告の比ではない。
この事実関係によれば、被告の一部弁済によって原告らに信義則上保護に値する期待が生じるとは言い難く、他方、時効完成を知らずに原告らに言われるままに支払をした被告が、その後時効完成の事実を知って、時効を援用することが信義則に反すると評価するのは酷にすぎるので、被告の時効援用権の行使は信義則による制限を受けないと解するのが妥当である。よって、原告らの本件各貸金債権の時効消滅の効果は認められ、被告には支払義務はない。

東京地方裁判所判決 平成7年7月26日

【 判決要旨 】

債権者が、消滅時効完成後に欺瞞的方法を用いて債務者に一部弁済をすれば、もはやもはや残債務はないものと誤信を生ぜしめ、その結果債務者がその債務の一部弁済をした場合、債務者は、その債務についての消滅時効の援用権を喪失しない。

東京簡易裁判所判決 平成11年3月19日

【 判決要旨 】

債権者が、消滅時効完成後に、債務者の無知に乗じて欺瞞的方法を用いて債務者に一部弁済を促したり、債権の取立が法令や通達などに抵触する方法でなされた場合にまで、債権者の保護をするために債務者がその債務について消滅時効の援用権を喪失すると解すべきいわれはない。

大阪地方裁判所判決(控訴審) 平成25年10月25日

【 判決要旨 】

時効期間経過した後、借主が弁済をした事案につき、貸主の貸金業者従業員が威圧的態度で脅迫的言動を用いて残債務の一部支払いを迫り、その結果、借主が恐怖心を抱き、切迫した心理状態のもとで支払いをせざるを得なかった ことを考慮すると、信義則に照らし、借主がもはや時効を援用しないとの保護するべき信頼が貸主に生じたとはいえず、借主は消滅時効の援用権を喪失したということはできない。

信義則上、時効援用権を喪失とした判例

東京簡易裁判所判決 平成15年03月19日

【 判決要旨 】

債権者が債務者に対して消滅時効が完成している旨を説明しなければならない義務はなく、敢えて伏せていたとしても、そのことのみをもって被告の無知に乗じた詐欺的なものであるとは言えない。強圧的請求があったとも認められず、自らの自由意思に基づき返済の意思表明をしたものと認められ、その後弁済したことは債務の承認であり、その時点で既に信義則上時効援用権を喪失している。原文

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