◆分割払いの消滅時効の進行開始は?
分割返済(割賦払い・通常は月賦払い)の契約でお金を借りた場合には、消滅時効の起算日はどうなるのでしょうか?
初めの契約成立日でしょうか、支払いの不履行の時なのか、または、債権者が請求した時が起算日なのか?
例えば、分割支払い(月賦払い)の契約で50万円を借入て、毎月1万円ずつ50回返済する場合、消滅時効の起算日は、各割賦金の弁済期日ごとに個別に進行するのか、債務者が分割返済を怠ったときに借入金全額について進行するのかという疑問の話です。
※分割と割賦の法律的な定義は違いますが、当サイトでは借金問題について解説するサイトなので、「分割返済」と「割賦払い」は、ほぼ同じ意味として取り扱っています。
クレジット契約の分割払い、消費者金融のリボルビング払いなど、毎月一定額を返済していく債務を割賦払い債務(月賦払い)として解説しています。
割賦払いの取り決めで、「期限の利益喪失約款」を定めていない場合は、各回の各割賦金額(分割金)につき、個別に、返済を不履行した日の翌日から消滅時効の進行を開始することとなります。
しかし、一般的に割賦払いの契約では、「債務者が一回でも支払いを怠ったときは当然に割賦払い契約は解除され、直ちに残額を一時に支払う義務を負う。」 旨の特約がついています。(これが期限の利益喪失約款です。)この場合いつが起算日なのでしょうか。
これについては、学説や判例で、どの時点から時効が進行するのかについて下記のように見解が分かれています。
有力な学説では、「期限の利益喪失約款」があるので、1回でも支払を怠ったときに残額全部の弁済期が来るのであるから、債権者はいつでも残額の支払い請求ができることになるので、その時が起算点(起算日)である。
よって、一回でも支払を怠ったときに債権者の意思表示がなくても消滅時効が進行すると解すべきである。
これを即時進行説といいます。
しかし、最高裁第二小法廷・昭和42年6月23日判決によると、「割賦金弁済契約において、債務者が割賦払いの約定に違反して割賦金を支払わなかったときは直ちに残額全部を弁済すべき約定が存在する場合でも、各割賦金額につき約定弁済期の到来毎に順次消滅時効が進行するものであり、債権者が特に残債務全額の弁済を求める意思表示を債務者に対してなした場合に限り、その時から残額全部について消滅時効が進行開始する」としています。
これを債権者意思説(判例)といいます。
この判例により裁判所の考え方は、ほぼ固まっています。
要するに割賦金を1回でも支払わなかったときの期限の利益喪失約款があったとしても、債権者が債務者へ残額全部を支払えとの催告がなければ、個々の返済期日ごとに時効は個別進行するということです。
⇒判決全文
もし、分割払い(月賦払い)契約に上記のような約定(期限の利益喪失約款)がない場合はどうなるのでしょうか?
この場合、既に解説しましたとおり、毎月の弁済期日ごとに消滅時効の起算日を定めるほかなく、尚且つ、債権者が債務者に対して延滞している月賦金の支払を催告すると共に何日以内に支払わなければ月賦払い契約を解除するとの通知をした上で、次に指定した期限までに支払わなかったときに、改めて月賦払い契約の解除通知と残額全部の支払催告をすることになります。
このように債務不履行後に一括請求した時点ではじめて残債務全額の進行が開始するということになり、もし、これらの通知や催告をしない場合には、全ての残債務の時効は、最終弁済期日が起算日(起算点)になるということです。
※一般的な契約の場合は ⇒ 消滅時効の起算日
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