短期消滅時効とは何でしょうか?民法上の10年、5年よりも短い期間で消滅するものがある。

短期消滅時効について

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法律のルールに従って手続きを行う

消滅時効とは、その字のとおり、債権者がもっていた債権が一定期間、権利を行使しないことによって消滅するものであることは、これまでもお話ししましたとおりです。
まず、民法では、債権を10年間行使しないときは消滅すると定められています。また、商取引の一般の消滅時効の期間は5年とされております。
これまでは、民事の10年賀適用されるのか、商事時効の5年が適用されるのかという話を中心にしてきました。

  • @一般民事債権は10年(民法第167条)
  • A一般商事債権は5年(商法第255条)

民法や商法、またはその他の法律により、権利関係を迅速に確定するために、より短い期間で時効が成立する場合が定められており、これらを総称して「短期消滅時効」と呼んでいるのです。

  • Bその他に5年ないし1年の短期消滅時効がある。

※ただし、民法改正により、2018年をめどに時効成立期間は、一律5年に統一される可能性があります。
職業別の短期消滅時効等の廃止(民法170〜174条の削除)の予定がされています。

前述のとおり、短期消滅時効には民法以外の法律にもたくさんあるのですが、民法上にもたくさんの短期消滅時効が記されていますので、ここで解説したいと思います。また、参考として他の法律での時効も出来るだけ記します。

(1)1年で消滅するもの

次に掲げる債権は1年間行使しないときは消滅する。

@月またはこれより短い時期によって定めた使用人の給料
  に係る債権 (民法第174条1号)
月給・週給・日当 などです。役員報酬は含まない。

現在では、労働基準法で労働債権(使用人の給料)は2年とされていますので、特別法である労働基準法が優先して適用されるので、現実には、この1号は適用されない。
(同法で退職金は5年されている。)
強いていえば、芸能タレントなどと芸能プロダクションとのエンターテイメント関係の契約に基づく報酬やプロスポーツ選手(プロ野球・プロサッカー・プロレスラーなど)の賃金など労働基準法が適用されない場合の賃金債権が当てはまるのだと思いますが、どちらかというと下記A項の「自己の労力の提供」に当たるのだと思われます。

サラリーマンなど一般社員と違って、取締役の「役員報酬」の場合はこれに含まれません。取締役は会社の機関であり業務執行を決定したり、取締役会の構成員であったりします。会社と委任契約関係にあります。
つまり、使用人としての立場ではなく、会社側(使用者)の立場であり、会社に「使用される者(労働者)」ではないのです。
この役員報酬の法的性質は、商事委任事務処理の報酬であり、商事債権として5年の消滅時効が適用になります。
ただし、兼務取締役、いわゆる「取締役部長」など、従業員としての職務にも従事して、と労働者と取締役の両方の立場の者は、役員報酬部分と給与部分とを分けて考える必要があり、それぞれに時効期間が違うことになります。
なお、取締役以外の役員(監査役、執行役、会計参与、支配人など)も同様と考えられる。

引用 長戸路政行著、「時効」より
同居の親族のみを使用する事業所と家事使用人とには、家内労働法が適用されますので、民法第174条1号が適用されるのはお手伝いだけということになりましょう。 引用ここまで
A自己の労力の提供または演芸を業とする者の報酬または
  その供給した物の代価に係る債権 (民法第174条2号)
●自己の労力の提供を業とする者とは、
大工さんや植木職人、左官等などです。

●演芸を業とする者とは、
歌手や俳優、芸人、タレントなどです。

前述の芸能プロダクションなどとのエンターテイメント関係の契約に基づく報酬債権などのことですが、実態によってはこれに当てはまらない場合もある。
B運送賃に係る債権 (民法第174条3号)
貨物運送、宅配便、タクシー代、引越トラック料金、旅客バス代等、旅客や貨物の運送契約に基づく代金債権です。
C旅館、料理店、飲食店、貸席または娯楽場の宿泊料
  飲食料、席料、入場料、消費物の代価または立替金
  に係る債権 (民法第174条4号)
ホテル、旅館、レストラン、飲食店、劇場、映画館、野球場、スナックやバーなど、ホテルや旅館などの宿泊契約、料理屋のサービスに関する契約などに基づく代金債権です。
D動産の損料に係る債権 (民法第174条5号)
レンタカー、レンタルビデオ、貸衣装、などの、極めて短期間で貸し出される物の損料のことです。
長期間の賃貸借(最高裁判決昭和46年11月19日)やリース契約には適用なし。
その他

民法第556条、地上権等がある場合等における売主の担保責任は、買主が事実を知った時から1年以内に契約の解除又は損害賠償の請求をしなければならない。

民法第1042条、減殺請求権の期間は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。

商法第566条、商法第589条、商法第766条、国際海上物品運送法第14条第1項、運送取扱人の責任、陸上運送人の責任、海上運送人の責任、荷受人が運送品を受け取った日から1年

商法第567条、運送取扱人の委託者又は荷受人に対する債権は、荷受人が運送品を受け取った日から1年

商法第626条、倉庫営業者の責任、寄託物の滅失又は毀損に因って生じたる倉庫営業者の責任は、出庫の日より1年を経過したときは時効によって消滅する。

手形法第70条2項、、所持人の裏書人及び振出人に対する請求権は、適法な期間内に作成させた拒絶証書の日付から無費用償還の文言が記載された場合には、満期の日から1年間行使しなければ消滅時効が完成する。
ただし、引受人に対する為替手形上の請求権は、3年、裏書人の他の裏書人及び振出人に対する請求権は、6月間

小切手法第58条、支払保証人の義務の時効、支払保証をした支払人に対する小切手上の請求権は、提示期間経過後1年間行使しなければ消滅時効が完成する。
ただし、所持人の裏書人、振出人、その他の債務者に対する遡求権は、提示期間経過後6月間行使しなければ消滅時効が完成する。(小切手法第51条)

労働基準法115条労働者の賃金(退職手当を除く、退職手当は5年)・災害補償その他の請求権、尚、労働基準法が適用されない場合は1年。

(2)2年で消滅するもの

次に掲げる債権は2年間行使しないときは消滅する。

@生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は
  商品の代価に係る債権 (民法第173条1号)
農業者等、製造加工業者、卸売、小売商人などの売却代金、公共料金等(ガス料金、電気料金、水道料金)、産物または一般的な商品売買における商品の代価についての債権、つまり、売掛債権のことです。

ただし、「下水道料金」は、地方自治法236条1項の「金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、5年間これを行なわないときは、時効により消滅する。」に該当します。支払期日の翌日から5年です。
A自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作しまたは自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権 (民法第173条2号)
●「自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作」することを業とする者とは、
鍛冶屋、建具屋、菓子屋、家具製造人、洋服屋、洋裁・和裁、靴屋、画家などの製作費、

●「自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者」とは、
理髪師、美容師、エステ、洗濯業者・クリーニング業者、印刷などの手間賃債権、
居職人・製造人の仕事に関する債権、いわゆる請負契約によって発生する債権

柔道整復師(整骨院)の施術料金の請求権もこれに含まれ2年です。
柔道整復師の行う施術は医療行為ではなく、医業類似行為です。鍼灸、マッサージも同様と考えられる。
医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権3年とは異なります。
B学芸または技能の教育をおこなう者が生徒の教育、衣食
  または寄宿の代価について有する債権 
  (民法第173条3号)
学校、塾、教師、家庭教師の授業料債権、生け花、茶道、英会話、ピアノ、ソロバン、お稽古事などの月謝・謝礼金・教材費など、学芸・技能の教育者の教育・衣食・寄宿に関する債権、各種習い事についての債権のことです。

これらは、日常的に頻繁におこなわれている契約にもとづく債権で、これらの契約について短期間での消滅時効を規定することで権利関係を単純化する目的があります。

その他

民法第172条1項、弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権は、その原因となった事件が終了した時から2年間行使しないときは、消滅する。
弁護士、弁護士法人または公証人の職務に関する債権の消滅時効について規定しています。いわゆる、着手金や報酬の請求権のことです。なお、「その原因となった事件が終了した時」とは別に、その債権についての弁済期の合意があった場合は、時効の起算点は、その弁済期とな。(大審院判決明治40年3月16日)
※司法書士、税理士等は該当せず。司法書士の報酬請求権について民法172条の類推適用を否定した事例として東京地判平成8年4月22日があります。
しかし、弁護士と司法書士で報酬請求権の消滅時効について区別することに合理性は認められないとする批判もあります。

民法第426条、詐害行為取消権:債権者が取消しの原因を知った時から2年

民法第768条2項、財産分与の消滅時効は離婚成立から2年

商法第663条、保険金支払請求権・保険料返還請求権は、生保、損保を問わず、2年間行使しないと時効により消滅する。

(3)3年で消滅するもの

次に掲げる債権は3年間行使しないときは消滅する。

@医師・助産師・薬剤師の医療・助産・調剤に関する債権 (170条1号)
医師、助産師、歯科医、獣医、薬剤師の医療、助産、調剤、に関する債権

病院や医院・クリニックなどでの入院や手術その他の治療による医療費、薬代も含みます。消滅時効の起算日は弁済予定の日、もしくは最終の弁済をした日となります。市販薬の販売による債権は含まない。
なお、柔道整復師(整骨院)、鍼灸の施術料金の請求権は2年です。

時効の起算日は、支払期日がある場合はその日、支払期日が決まっていない場合は、治療が終了した日、治療費の一部を支払った場合は最後の支払日となります。

A工事の設計、施工または監理を業とする者の工事に関する債権(170条第2号)
技師・棟梁・請負人の工事に関する債権などの製作費、土木建築工事の請負代金、自動車修理代金等。工事終了のときからから起算します。
その他

民法第171条、弁護士・弁護士法人・公証人の職務に関して受け取った書類についての義務に対する権利
弁護士又は弁護士法人は事件が終了した時から、公証人はその職務を執行した時から3年を経過したときは、その職務に関して受け取った書類について、その責任を免れる。

民法第724条、不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
交通事故等の損害賠償請求や慰謝料など

夫婦間の慰謝料は離婚慰謝料と呼ばれ、離婚が具体化することによって慰謝料が生じたと考えますから、消滅時効は離婚成立の日を起算日として3年、また、不貞行為などは、これ自体が不法行為となることもあり、この場合、不貞行為の時点で損害賠償請求権が生じ、請求者が不貞行為を知った時が消滅時効の起算点となります。不貞行為の相手方(浮気相手)についても同じです。

※ただし、不貞行為自体による慰謝料については、離婚成立から6か月間は消滅時効が「時効の停止」により完成しません。夫婦間では相互に権利行使をしないことが通常であり、離婚時に請求できるよう保護しておくための規定です。(民法159条)よって、不貞行為の相手方(浮気相手)にはこの規定は当てはまりません。

製造物責任法第5条、製造物責任(PL法)に規定する損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から3年間行わないときは、時効によって消滅する。その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から10年を経過したときも、同様とする。

手形法第70条第1項、為替手形の所持人から引受人に対する請求権

手形法第77条第1項第8号、約束手形の所持人から振出人に対する請求権

(4)5年で消滅するもの

次に掲げる債権は5年間行使しないときは消滅する。

@年・これより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権(169条)
年金、恩給、扶助料、地代、利息、賃借料、
NHK受信料、
など、本条は、定期給付債権の短期消滅時効について規定しています。
「定期給付債権」とは、年金債権の個々の1回分の給付金や、月額払いの家賃、年額払いの金利、マンションの管理費などの債権のことです。

定期金債権の支分権も、定期給付債権に含まれます。

分割払債権は「定期給付債権」に含まれないと解されています。

定期給付債権に類似する債権であっても、次のものは定期給付債権とされず、本条は適用されません。
1. 割賦払い債権の個々の割賦金
 (大審院判 昭10.2.21、大審院判 昭11.4.2)
2. 遅延利息(大審院判 明42.11.6)
その他

商法第522条、商事債権、商行為によって生じた債権は、企業間の商取引によって生じた債権、会社が行う貸付債権など、5年間行使しないときは時効によって消滅する。

民法第126条、取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする。

民法第832条、財産管理に関する親子間の債権、親権を行った者とその子との間に財産の管理について生じた債権は、その管理権が消滅した時から5年間これを行使しないときは、時効によって消滅する。

民法第884条、相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする

労働基準法第115条後段、労働者の退職手当、5年間行わない場合においては、時効によって消滅する。

地方自治法第236条、金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利、金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、5年間これを行なわないときは、時効により消滅する。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。

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